バイナリーオプション被害事例 第12話|三通目にあった出口

バイナリーオプション被害の実態 今回取り上げるのは、岐阜県岐阜市で公立体育館の夜間管理を担当する沢田正明さん(仮名・62歳)のケース ― 人物と状況を再構成した創作事例。 2026.09.25 67

「47,300円しかない場合は、どうすればいいんですか?」

岐阜県岐阜市に住む沢田正明さん(仮名・62歳)が、A社のカスタマーサポートに最初に送った質問です。

口座に残っていたのは47,300円。

当時、A社の最低出金額は50,000円でした。

足りないのは2,700円です。

沢田さんが知りたかったのは、最低出金額ではありません。

47,300円だけ残っている人は、どうすればいいのか。

ところが最初の返信には、その答えがありませんでした。

「現在の最低出金額は50,000円です。」

「誰でも、思いがけない出来事は起こります」― バイナリーオプション被害事例 第12話の導入バナー
※本記事は、寄せられた情報や公開事例で確認されるトラブルの傾向を参考に、人物・状況を再構成した創作事例です。特定の個人や事業者を示すものではありません。

※今回は、カスタマーサポートとのやり取りを追うルポ形式で構成しています。

沢田さんは定年後も仕事を続けています。

現在は市内の公立体育館で、週4日、夜間管理を担当しています。

閉館後の体育館を、懐中電灯を手に見回る様子(創作事例のイメージ)

利用時間が終わると、廊下、更衣室、倉庫を回り、人が残っていないか、窓や扉が閉まっているかを確認します。

照明の届かない場所を見るときは、ポケットに入れた小さな懐中電灯を使います。

一つ確認し、次へ進む。

全部終われば、その日の仕事も終わります。

バイナリーオプションを知ったのは、定年後でした。

通勤中の車で経済ラジオ番組を聞き、為替に興味を持ったことがきっかけです。仕組みやリスクを自分で調べたあと、A社に8万円を入金しました。

毎日取引していたわけではありません。

半年ほどの間、ときどき利用し、残高は増えたり減ったりしました。

そして47,300円が残ったところで、沢田さんは取引をやめることにしました。

取り返すために続けるつもりはありませんでした。

残っているお金だけ銀行口座へ戻そうとしました。

口座を残すか閉じるかは、そのあとで考えるつもりでした。

そこで画面に表示されたのが、

最低出金額 50,000円

という条件でした。

登録した当時、最低出金額は10,000円でした。利用している間に、サイトのお知らせで50,000円へ変更されていたのです。

沢田さんはサポートに送りました。

「残高が47,300円で、最低出金額に届きません。この場合、残った資金はどのように出金できますか?」

その日の午後、返信がありました。

「現在の最低出金額は50,000円です。50,000円未満の出金申請は受け付けておりません。」

管理室の机で、サポートからの最初の返信を読み返す様子(創作事例のイメージ)

沢田さんは、もう一度読みました。

それは問い合わせる前から知っていたことでした。

その夜、体育館の閉館作業中に、もう一度メッセージを書きました。

今度は少し具体的にしました。

「最低出金額が50,000円なのは理解しています。今後、取引する予定はありません。追加入金もしたくありません。現在の47,300円を返してもらう方法はありますか?」

翌日、二通目の返信が届きました。

残高が50,000円以上になれば通常の出金申請が可能になるという説明でした。

残高が増える例として、追加入金や今後の取引結果についても触れられていました。

自宅の食卓で、二通目の返信を見ながら不足額を考える様子(創作事例のイメージ)

不足しているのは2,700円です。

2,700円を入金し、5万円にしてから出金する。

それなら簡単に見えるかもしれません。

沢田さんはそうしませんでした。

取引もしませんでした。

代わりに三度目の問い合わせを送りました。

今回は一文だけでした。

「追加入金も取引もしない場合、この47,300円はどうなるのでしょうか。」

閉館後の廊下のベンチで、三通目の返信を確認する様子(創作事例のイメージ)

返信は2日後に届きました。

そこで初めて、これまでとは違う方法が書かれていました。

口座を解約する場合は、解約申請と本人確認の後、最低出金額に満たない残高についても返金手続きを行うことができる、という内容でした。

沢田さんは、その文章を二度読みました。

方法がなかったわけではありません。

通常の出金画面からはできなかっただけでした。

沢田さんは、もう一度尋ねました。

「この方法は、最初に問い合わせた時点でも利用できたのでしょうか?」

利用できたという趣旨の回答が返ってきました。

ただし通常出金と、口座解約後の残高返金は別の手続きであり、解約を希望する場合に案内するものだという説明でした。

沢田さんには、そこが少し引っかかりました。

最初から聞いていたのは、

「5万円に届かない残高をどうやって戻すのか」

ということでした。

二度目の問い合わせでは、もう取引しないとも伝えています。

それでも「口座を閉じる」という選択肢が出てきたのは、三通目でした。

後日、沢田さんはこう話しました。

「最初の二回は、質問に答えてもらった感じがしなかったんです」

「5万円だということは、画面を見れば私にも分かりましたから」

自宅で解約の手続きを終え、ノートパソコンを閉じる様子(創作事例のイメージ)

沢田さんは解約を申し込みました。

本人確認を経て、残高返金の手続きが進みました。

もう取引をしないと決めていたため、口座を残す理由もありませんでした。

その後、A社の口座は利用できなくなり、銀行口座には47,300円が入金されました。

金額は減っていませんでした。

数字だけを見れば、損失は0円です。

入金を確認した朝、自宅の前でスマートフォンを手に立つ様子(創作事例のイメージ)

それでも沢田さんが覚えているのは、入金された日ではありません。

残高を返してもらう方法は最初から存在していたのに、その選択肢が最初の回答にはなかったこと。

「お金だけ出して、口座を残すことはできませんでした」

「結局、残高を戻してもらうには、自分で口座を閉じる方を選ぶしかなかったんです」

A社が残高を返さなかったわけではありません。

最低出金額も設定されていました。

解約時の残高返金という手続きも存在しました。

問題は、47,300円という残高を抱えた利用者が「どうすればいいのか」と尋ねたとき、その方法が最初から選択肢として示されなかったことでした。

その夜も、沢田さんは体育館を一周しました。

観客席の下に残っていた水筒を拾い、忘れ物の棚へ置きます。

最後に小さな倉庫の扉を開けました。

照明の届かない奥を、ポケットの懐中電灯で照らします。

何もありません。

扉を閉め、鍵を回しました。

沢田さんは懐中電灯のスイッチも押しました。

見回りを終え、懐中電灯と鍵を管理室の引き出しへ戻す様子(創作事例のイメージ)

光が消えたことを確認してから、鍵と一緒に管理室の引き出しへ戻しました。

編集部から

今回のポイントは、「最低出金額が50,000円だった」という条件そのものだけではありません。

最低出金額に届かない残高が残ったとき、追加入金や追加取引を望まない利用者にどのような選択肢があるのか、そしてカスタマーサポートがそれをいつ案内するのかという点です。

今回のケースでは通常の出金条件を満たしていませんでしたが、口座を解約したうえで残高を返金する別の手続きが存在しました。

しかし、その方法が示されたのは同じ趣旨の質問を繰り返した後でした。

同様の状況では、次の点を確認しておきたいところです。

  • 最低出金額を下回る残高はどのように扱われるのか
  • 追加入金や追加取引をせずに残高を返金してもらえる方法があるか
  • 口座解約時に残高はどのように処理されるのか
  • 解約後の返金に追加の本人確認や手数料が必要か
  • 通常出金と解約時の残高返金が別手続きになっているか
  • 問い合わせ時に利用可能な選択肢をまとめて案内してもらえるか

同じ質問を何度か繰り返さなければ別の方法が出てこない場合は、問い合わせ日時と回答内容を残しておくことも、状況を整理する材料になります。

似た事例を何度も目にすると慣れてしまいがちですが、安全のための確認には繰り返す価値があります。

出金条件だけでなく、条件を満たせない場合にどのような代替手続きがあるのかまで確認しておくことが重要です。

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本コンテンツは、特定の事業者の利用やバイナリーオプション取引を勧誘・推奨することを目的としたものではありません。

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