バイナリーオプション被害の実態

実際に起きたトラブルの事例と、事前に確認しておきたいポイントをまとめます。

バイナリーオプション被害事例 第6話|まだ使っているつもりだった

バイナリーオプション被害の実態 今回取り上げるのは、岡山県倉敷市でクリーニング店の受付として働く47歳、松井理恵さん(仮名)のケース ― 人物と状況を再構成した創作事例。 2026.08.14 269

今回取り上げるのは、岡山県倉敷市でクリーニング店の受付として働く47歳、松井理恵さん(仮名)のケースです。

松井さんの口座からお金が減り始めたのは、取引をしているときではありませんでした。

むしろ、取引をしていなかった間のことでした。

「誰でも、思いがけない出来事は起こります」― バイナリーオプション被害事例 第6話の導入バナー
※本記事は、寄せられた情報や公開事例で確認される被害類型を参考に、人物・状況を再構成した創作事例です。特定の個人・事業者を指すものではありません。

クリーニング店のカウンターには、毎日たくさんの預かり票が積み重なる。

ワイシャツ二枚。コート一着。学生服上下。

松井理恵は、閉店前になると番号を確認し、受け取りを待っている衣類の札を順番に並べ直す。

「これ、来週でも大丈夫ですか?」

そう聞く客には、保管期間を確認してから答える。

期限があるなら伝える。

追加料金がかかるなら、それも先に伝える。

松井にとっては、それが普通のことだった。

クリーニング店で仕上がり品を包む様子(創作事例のイメージ)

A社のバイナリーオプションを始めたのは、その前年の春だった。

スマートフォンのニュースアプリで為替の記事を読んでいたとき、関連する広告が表示されたのがきっかけだった。

最初から大きな金額を入れたわけではない。

取引の仕組みや入出金方法を確認したあと、17万円を入金した。

週に二、三回。

仕事から帰って夕食を済ませたあと、無理のない範囲で利用した。

三か月ほど経ったころ、口座残高は18万2,800円になっていた。

そのころから、少しずつ取引をしなくなった。

損失が続いたわけではない。

A社との間で何か問題が起きたわけでもなかった。

作業場の机でスマートフォンを確認する様子(創作事例のイメージ)

クリーニング店が繁忙期に入り、帰宅時間が遅くなった。

休みの日には母親の買い物に付き添うことも増えた。

夜、スマートフォンを開いてまで取引をする気にならない日が続いた。

「また余裕ができたらやればいい」

それだけだった。

口座を解約するつもりはなかった。

18万2,800円も、そのまま残しておいた。

その後、一度か二度、A社のサイトを開いた記憶はある。

残高を見て、画面を閉じた。

取引はしなかった。

それからA社のことをほとんど考えなくなった。

買い物帰りの道で並んで歩く二人(創作事例のイメージ)

約一年後。

休日の午後、松井は自宅で古いブックマークを整理していた。

そこにA社のページが残っていた。

「そういえば、どうなってたっけ」

久しぶりにログインした。

パスワードを一度間違えた。

二度目で画面が開いた。

そこで松井は、残高の数字を確認した。

15万4,800円。

一瞬、自分の記憶違いかと思った。

以前は18万円を超えていたはずだった。

取引で負けた記憶はない。

そもそも、この一年は一度も取引していない。

出金もしていない。

入金もしていない。

松井は口座履歴を開いた。

取引履歴とは別の欄に、同じ名称の項目が並んでいた。

口座維持手数料 -4,000円

一か月後にも、

口座維持手数料 -4,000円

さらにその翌月にも。

全部で七回。

合計2万8,000円。

18万2,800円だった残高が、15万4,800円になっていた理由は、それだった。

窓辺でノートパソコンに向かう様子(創作事例のイメージ)

松井はすぐには問い合わせなかった。

先にA社のサイトを探した。

手数料。

口座管理。

利用規約。

いくつかページを開いて、ようやく該当する記載を見つけた。

一定期間、取引や入出金などの口座活動が確認されない場合、口座は非アクティブ状態となり、その後は月ごとに口座維持手数料が発生する。

記載そのものはあった。

金額も書いてあった。

松井が知らなかったのは、自分の口座がすでにその状態になっていたことだった。

翌日、A社のサポートに問い合わせた。

「途中で何度かログインしたと思います」

「残高も確認しています。それでも非アクティブになるんでしょうか」

返ってきた回答では、ログインや残高確認だけでは「口座活動」に含まれないと説明されていた。

取引、入金、出金など、A社が定める活動が一定期間なければ非アクティブ状態になる。

松井は、その説明を読んで初めて分かった。

自分にとっては「まだ持っている口座」だった。

A社にとっては「活動のない口座」だった。

その違いだった。

A社の規定上、手数料の計算が間違っていたわけではなかった。

ただ、松井には一つ納得できないことがあった。

「手数料が始まる前に、何か案内はありませんでしたか」

登録していたメールアドレスを検索した。

A社の名前でも探した。

「非アクティブ」

「口座維持手数料」

「手数料」

迷惑メールフォルダも確認した。

少なくとも松井が確認できる範囲では、

「まもなく非アクティブ状態になります」

あるいは、

「来月から口座維持手数料が発生します」

といった個別の案内は見つからなかった。

最初の4,000円が差し引かれたときにも、特別な通知を見た記憶はない。

二回目も、三回目も同じだった。

結果として松井が気づいたのは、七回分、2万8,000円が差し引かれたあとだった。

夜、パソコンとスマートフォンを並べて確認する様子(創作事例のイメージ)

「最初の一回で分かっていたら、その時点で出金していたと思います」

松井はA社にそう伝えた。

口座を使っていなかったことについては争うつもりはない。

規約に記載があったことも理解している。

ただ、残高から毎月お金が減り始めていることを知らないまま、一年近く経ってしまった。

その点について説明を求めた。

A社からの回答は、口座維持手数料については利用規約および手数料案内に掲載しており、利用者自身が確認する仕組みになっている、というものだった。

すでに差し引かれた2万8,000円の返還にも応じられないとのことだった。

松井は何度か文章を書き直したあと、返信するのをやめた。

そして残っていた15万4,800円について出金手続きを行い、A社の利用を終えた。

もう投資活動自体をやめようと決心した。

「規約に書いてあったと言われたら、それはそうなんです」

後日、松井は話した。

「私も一年近く取引していなかったので」

少し間を置いてから、こう続けた。

「でも、18万円がそこにあると思ってたんですよね」

口座を忘れていたわけではない。

捨てたつもりもない。

また使うかもしれないと思って、そのまま置いていた。

「使っていなかったと言われれば、そうなんでしょうね。でも、私はまだ使っているつもりだったんです」

その日の夕方、店に一人の客が来た。

半年ほど前に預けた礼服を取りに来た男性だった。

預かり票を失くしてしまったらしく、申し訳なさそうに名前を伝えた。

松井はパソコンで受付記録を確認し、奥のラックを探した。

黒い礼服は、まだそこにあった。

店のカウンターで接客する様子(創作事例のイメージ)

「ありましたよ」

男性がほっとした顔をした。

会計を済ませたあと、松井は保管していた預かり票を処理済みの箱へ入れた。

半年間、誰も取りに来なかった服だった。

それでも店には、まだ預かっているものとして残っていた。

編集部から

口座を長期間利用していない場合に発生する「休眠口座手数料」「非アクティブ口座手数料」「口座維持手数料」などは、サービスによって条件や金額が異なります。

また、「利用していない状態」の定義が、単にログインしていないことを意味するとは限りません。

ログインや残高確認だけでは口座活動とみなされず、一定期間、取引や入出金がないことで非アクティブ状態に移行するサービスもあります。

今回のケースでは、口座維持手数料に関する規定自体は確認できました。

一方で、利用者が非アクティブ状態へ移行する前や、実際に手数料の差し引きが始まった時点で、その事実を十分に認識できなかったことが、2万8,000円の差し引きに気づくまで時間がかかった要因となりました。

長期間利用しない可能性がある場合には、特に次の点を確認しておくことが重要です。

  • 何日・何か月口座活動がないと非アクティブまたは休眠扱いになるのか、利用規約に明確に記載されているか
  • 「口座活動」として認められる行為は何か
  • ログインや残高確認だけでも活動として扱われるのか
  • 非アクティブ状態になった場合、月額でいくらの手数料が発生するのか
  • 手数料は何か月間継続して差し引かれるのか
  • 非アクティブ状態への移行前に個別通知があるのか
  • 実際に手数料が発生した際、メールなどで通知されるのか
  • 残高を残したまま長期間利用しない場合、どのように扱われるのか

似た内容が繰り返されるように感じても、繰り返し確認しておく価値があります。

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本記事は、特定の事業者やバイナリーオプション取引への投資を推奨・勧誘することを目的としたものではありません。

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